開催レポート/JMAマネジメント講演会社会を変えるリーダーシップ―想いを形にする方法
〜社会起業家の草分けが語る、困難・苦悩の乗り越え方〜2025年10月29日(水)
2025年10月29日(水)に第7回JMAマネジメント講演会をオンライン開催いたしました。
今回の講演会は、社会を変えるリーダーシップ―想いを形にする方法~社会起業家の草分けが語る、困難・苦悩の乗り越え方~をテーマに、社会起業家 特定非営利活動法人かものはしプロジェクト 共同創業者 村田 早耶香氏をお招きしました。
当日は会員企業103名にお申込みいただき、講話の後には質疑応答の時間を設け、参加者と活発な意見交換が行われました。
当日は3つのパートから、村田氏のこれまでの歩みをもとに、「無力さや困難をどう乗り越えてきたのか」
「なぜ、想いを形にし続けられたのか」といった実践的な問いに迫り、“社会を変えるリーダーシップ”を多面的に紐解き、分かり易く講説いただきました。
第一章 学生~団体立ち上げまで
子どもが売られる問題とは・・・・・
大学2年生時に現在活動している社会課題に出合い、翌年に団体を立ち上げる。
大学の国際交流学部で海外支援の勉強をする中、授業でミャンマーの山岳少数民族の貧困家庭の女の子が騙されて隣国タイの売春宿で働かされ、学校で勉強する夢が叶わないままエイズを発症して亡くなったという新聞記事を読み、生まれた場所・環境の違いで、大きく人生が変わってしまうことに衝撃を受けた。
自分の意思に反して売春宿で働かされている18歳未満の子どもたちは、全世界に約100万人いると言われている。実際に現場に行って現状を知りたいと思い、被害状況が深刻だったカンボジアに向かった。カンボジアは状況が悪化しており、被害にあった18歳未満の子どものいる保護施設を訪問した。
大人から酷い虐待を受け続け、何の罪もない少女が一人当たり大体100ドルと引き換えに売春宿に売られていた。たった1万円程度のお金がなかったがために、親が子どもを手放さないといけない状況に衝撃を覚え、彼女たちに出会って、自分にできることを探したいと強く思うようになった。
先ずはできることから始めようと、19歳から20歳頃までは知識をつけ、人との繋がりを作り、想いを伝え、行動した。その最中にビジネスを勉強している2人の大学生と出会い、この社会問題解決をめざすNPO法人「かものはしプロジェクト」を2002年に3人で立ち上げた。
2年かけて準備し、2004年大学卒業後、職業訓練所を作るためカンボジアに向かい、様々な失敗を乗り越えながら事業をスタートした。
第二章 挫折とその後の活動
人身売買をなくすためには、貧困家庭から売られてくる被害者を減らすために職業訓練所を作るなど経済的な自立促進施策と、買春者を減少させる取り組みの両方が必要となる。
順調な時期もあったが、ミッション変更や事業モデル転換を迫られる議論が生じ、2007年に解散の危機が訪れた。
事業モデルを転換することで、職員を路頭に迷わせる怖さ、応援してくれた人への申し訳なさなど、心身ともにギリギリの状態になったが、家族や共同創業者の助言から、弱さを見せてはいけない、優秀でないと人はついてこないというのは幻想であり、人の助けを借りて、一緒に意思決定しても良いと気付かされ、事業モデル転換を決断した。
農村最貧困層の女性たちをこれまで約240世帯から雇用し、その結果、その家庭で暮らす子どもたちが全員学校に通え、危険な出稼ぎに出るリスクが減った。
また、加害者を減らすことが被害者を減らすことに繋がるので、カンボジアの警察と連携して警察官への法律への理解のための研修の提供や、加害者逮捕に向けた実習の訓練支援を行った。
カンボジアの経済成長を背景に貧困層の減少、小学校の就学率向上、法整備が進んだことなど様々な要因も重なり、カンボジアでは15年間で被害者が激減した。状況改善に40~50年は必要と言われたが、挑戦し続けた結果、海外の酷い社会問題も解決に向かうことができると、このカンボジアでの経験で学んだ。
第三章 企業・個人にできること
私自身は団体を立ち上げて活動することを選んだが、企業がNPOと連携して社会貢献・社会課題に取り組む支援事例は数多くある。市民の寄付活動として、月額1,000円から応援できるサポーター会員制度がある。また、企業向けに講演会を行い、我々の取り組みや社会課題を知ってもらい、ニーズに合わせて研修テーマをカスタマイズして提供している。
また、当団体に企業社員がプロボノ(単なるボランティアとは異なり、職業上のスキルや経験を活かし、無償で社会貢献を行う活動)としてプロフェッショナルなスキルを活かして携わる活動もある。
以下、Q&Aセッションの内容
Q:社会課題解決のビジネスでは、どこからお金をもらい事業運営するか、という壁に直面すると思う。どのように多くの企業や団体より、支援・協働を得たのか教えてほしい。
A: 8割がマンスリーサポーターの寄付で現在17,500人が応援してくれている。過去には講演会を年間150~200回行っていたこともあり、講演活動を通じて支援者の輪が広がった。ほかにメディアからの取材、Web上での広報活動も繰り返し、サポーターが増えていった。また、その中で経営者の方々がいて、現在協賛企業として100社ほどご協力いただいている。
Q:かものはしの活動は国に支援されていると伺ったが、企業スポンサーは募っているのか。スポンサーに求める条件や審査はあるか。
A: 国からの支援はまだ一部しか受けておらず、逆にカンボジアの国に支援を行うこともあった。日本では活動資金の一部をこども家庭庁の予算より受けている。企業スポンサーに関しては年額10万円以上の寄付をお願いしており、法人会員として受付ている。条件は特になく、活動の主旨に賛同いただける企業にご協力をお願いしている。
Q:インド、カンボジア、日本で文化・風習が異なりますが、国により活動の違いがあれば教えてほしい。
A: 文化や風習は国によって真逆であるように感じるので、それぞれに合わせてやり方を変えなければならない。インドでは海外の法人が活動する際に一部制限や規制があり、インド人自身が行っている活動を支援する方が活動しやすい。カンボジアは当時、法人格を比較的短期間で取得することが可能で、海外からの支援をとても歓迎してくれた。日本は国として基盤が整っているため、省庁との連携も取りやすいが、一方で現状把握や関係機関間での情報共有・連携などに工夫の余地があると感じており、自治体、現場、中央省庁の連携は非常に重要であった。
Q:困難に直面した際に対応するためのマインドセット、心構えなどあれば教えてほしい。
A: 先ず疲れているときは良い意思決定が出来ないので、しっかり疲れを取り休息する。気分転換を行い、最後は初心に戻り、勇気を出して原点に戻ると、乗りこえることが出来る。
Q:カンボジア、インド周辺で裕福な国がありますが、そのような国々の支援は期待できるか。
A: カンボジアは我々が活動を始めた2000年代、最大の支援国は日本であったが、現在は中国の支援が多く、中国からのインフラ整備などの支援が入っている。インドは国として経済成長をしているので、国内の個人や企業、財団から支援が期待できる。
Q:日本国内での取り組みについて教えてほしい。
A: 国内では児童虐待の予防と虐待からの回復の事業を行っている。
児童虐待の予防のため、日本では困難を抱えた妊産婦の支援を行っている。また、児童養護施設や里親家庭を出たあとの18歳以降の支援が手薄なため、安心して自立できるよう全国にある63の事業所の中間支援を行い、支援の量を増やすために、業界団体として政策提言や運営に役立つ情報の提供を行っている。
Q:個人の寄付メンバーは、学生・社会人比率、男女比率はどのような分布か。また、個人として協力したい場合、直接コンタクトをすればよいか。
A: 支援者の平均年齢は約45歳、男女比は48対52で若干女性が多く、年齢別では40代中盤が一番多く、続いて50代、30代60代と続く。
当団体HPトップ画面 今すぐ支援する> をクリックいただくと登録ができます。
Q:大学生の頃に単身海外に渡り、行動を起こすのは容易ではないが、大学生までの人生の中でどういう経験をして、何を学んだからこそ、このような行動が起こせる自分になったのかと思うか。
A: 私が中学生の頃から、アジア圏の留学生をホームステイ先として受け入れ、交流する環境で育ったので、その経験が影響していると思う。
Q:日本で保護を必要としている子どもたちをどうやって見出しているのか。児童施設に連絡を取っているのか。
A: 虐待の予防事業では主に妊産婦支援を行っており、行政からの紹介が最も多い。
孤立しがちな妊産婦がいつでも相談できて、支援を受けられるよう、千葉県松戸市に居場所を設け、そこで専門職のスタッフが関わりながら生活が安定するまでサポートしている。このような支援をする団体は全国に約30か所ほどあり、支援団体の数を増やしていくために連携を取る全国組織の運営も担っている。
最後に村田 早耶香氏よりメッセージ

村田 早耶香 氏
社会起業家 特定非営利活動法人かものはしプロジェクト 共同創業者
私は自分で団体を立ち上げて活動し続けている特殊な状況ですが、仕事として選ばなくても何か気になる社会課題に対してできることはたくさんあると思っています。例えばボランティア活動に参加してみたり、仲間を募って気になる社会課題に対してグループを作って、一緒に楽しく活動してみたり、プロボノとしてNPOの活動に参加してみたり、応援したいと思った団体に寄付をしたり、参加方法も関わり方も色々な形があるので、是非気になる活動があれば、参画していただけたら嬉しいです。














