【コマツ粟津工場】電力半減を切り口にしたダントツの生産改革とCSR活動

コマツ生産本部 粟津工場 生産技術部
部長 本郷 忠 氏

コマツ粟津工場の概要と取り組み

コマツは1921年に竹内明太郎氏が創設した日本を代表する建機メーカーです。現在は発祥の地である小松市に粟津工場を構えています。
粟津工場は2014年に工場再編という大プロジェクトに取り掛かりました。50年以上続く工場内の建屋は老朽化や構造的な要因で生産性の向上や消費電力削減の妨げになっていたことがきっかけとなり、工場の建て替えを行いました。そしてせっかくの建て替えの機会に、生産改革と電力削減を目指しました。
新設工場の特徴は、柱間隔が最大32メートルということに加え、床全面に地下ピットをもうけ、そこにに配線や配管、電源置き場、そして空調設備を格納したことです。無駄な柱や物が取り払われたことにより、平たんな作業スペースを実現し、また、地下ピットで空調を管理することにより、作業効率の向上と同時に使用電力の削減も実現しました。

生産ラインでは今までけん引台車を利用し建機を組み立てていましたが、建機と工員の作業スペースをそれぞれ独立稼働するベルトコンペア―式に変更したことで、平たんな作業スペースの確保が可能になりました。さらに、そのコンベア上では建機とともに作業員が移動するため、効率の良い組み立て作業が行えるようになりました。
ラップクレーンも増設したので、ラインの左右から部品を供給することが可能となり、以前より組み立てラインを短縮できました。こういった作業効率の向上によって、面積当たりの生産能力は2倍に上がりました。

また、2011年の東日本大震災を経て電力の大切さを感じたことから、電力使用量の削減にも注力しました。そこで主に改革が行われたのが空調設備とバイオマスエネルギーの活用です。
床下ピットに空調設備を配置したことで、高さ16メートルの工場のうち、人が作業を行う地上2メートルのみの空調管理を可能にしました。また、地域の環境問題になっていた放置されたままの間伐材をバイオマスエネルギーとして利用する技術を開発し、そこで得たエネルギーを発電やコンプレッサーへ効率よく利用しています。
加えて、使用電力量を数字にして「見える化」することで、生産機械の待機電力量の多さに気が付き、改善を図りました。これにより当初の目標であった前年夏比50%を大幅に上回る90%の電力量削減を達成しました。

プロジェクト活動の進め方

この工場再編は、50年に1度あるか否かと言われるほどの大プロジェクトでした。このプロジェクトは、若手中心のチームで進められました。なぜなら、この特別な機会は「人材育成の機会」と捉えられたからです。細分化された各チームのリーダーは必ず若手を起用し、毎週ミーティングが行われました。ミーティングには工場長などのトップクラスの社員も必ず参加しました。ミーティングの方針は「悩ませない」。結論を次回に持ち越さず「その場で決める」という意識を徹底しました。

組織風土の変化

このように若手が中心となってプロジェクトを実行し成功したことによって、社員全体が元気になったと思います。主体性を持つことにより、やりがいがみつかり、目の色が変わった若手社員が多く見受けられました。若手のチームでプロジェクト活動を進めた結果として、工場に一体感が生まれたのだと感じます。
また、工場再編後に工場を訪問する人が増えました。外の方から「見られる」という意識がさらに社員各自のモチベーションの向上や風土の活性化に繋がっていると考えています。

<工場視察>
工場内のコンベアーでは、1名づつ個々の工程を任されていましたが、エンジン等の組み込みの際は、その場で複数の作業員が協力して行っており、各作業員には無駄な動きが全く感じられません。建て替えによって柱や配線などの無駄なものが取り払われた作業場は、彼らに高い生産性を実現可能にさせています。こういった空間やシステムを最大限に生かすのも「個人」の力があってこそ、と言えるでしょう。