開催レポート/JMAマネジメント講演会あなたの組織をオーケストレーション
~戦略マエストロの創発術~
2025年5月12日(月)

2025年5月12日(月)に第1回JMAマネジメント講演会をオンライン開催いたしました。

今回の講演会は、「あなたの組織をオーケストレーション~戦略マエストロの創発術~」をテーマに、株式会社アキラカ 代表取締役/戦略創発ファシリテーター 伊賀 聡氏をお招きしました。
当日は会員企業240名にお申込みをいただき、講話の後には質疑応答の時間を設け、参加者と活発な意見交換が行われました。

当日は5つの論点に的を絞り、「戦略の自分事化」をキーワードに創造的な会議の方法論を中心に、目標設定・管理、1 on 1、日常コミュニケーションにも役立つ「人的資本経営の特効薬」を講説いただきました。

1.人的資本経営とは

人材を「資本」と考え、戦略的に投資活用することで企業価値を高めていく経営手法。
従来の人事は資源の配置、良い資源は手放さず囲い込みをする、先輩の背中を見て成長するのが人事・人材教育であったが、今後は人材を資本と考え投資し、多様な経験をさせながら自律性を尊重し、新たな企業価値創造につなげていくことが極めて重要である。

2.人的資本経営の本質とは

  1. 人事や人材育成は、経営企画、人事、人材開発任せにするのではない
    研修や人事諸制度の充実にとどまらない
  2. 事業(現場)と連携した、個人の経験拡大や挑戦の機会を通じて、成長を促すもの
    戦略的人財配置(異動、チーム編成、タスクフォース)とリアルな現場での育成が大事
  3. 企業(組織)と個人は、対話によって自律活性をもたらし、対等な関係に変わる
    上司とのOne on One面談だけに限らない

ダイバーシティ経験の中で、社員の主体性の尊重を3つの視点で取り組む。

  1. 自ら戦略を考え、意思決定していく実践の場づくりが大切
  2. 多様な人財が対話を通じて、刺激しあい、高めあう場づくりが大切
  3. 各メンバーの主体性や取り組む意欲を高める場づくりが大切

このように場づくりが非常に重要であり、その結果、個々人の成長と、企業価値の創造の両輪が回り、自律型組織へ変革すると考える。
この移り変わりを「協奏」、共に奏でる、協奏曲を奏でると表現する。

3.組織に求められるあり方の変化

従来の組織:効率がよい組織、軍隊型ビラミッド組織、上意下達、部門間のバケツリレーで展開。
従来のリーダー像:上からビジョンを与え背中を見て学ぶ。

自律型ティール組織(理想の組織)とは個々人がマイボール感を持ち、目標・戦略・価値を共有し、戦略が統合され、全体最適が生まれる。
新しいリーダー像はリーダーシップからフォロワーシップへ、同時にファシリテーション力も必要とされる能力、総じて戦略をともに作り協奏していくガイド役が戦略創発ファシリテーターの定義となる。

多様な個性専門性を持った人財が協働し、自分達の言葉で戦略を創ることでその企業ならではの、

  1. 創造的な戦略が生まれる
  2. 一人一人、目標、戦略、方針が自分事化し、取り組み意欲が高まる
  3. 組織間(担当間)に信頼と横連携が生まれる

つまり、相互触発/相互作用で組織の底力が120%高まり、こういった状態を戦略創発により組織がゾーン入ると言われる。

自分達の言葉で創った戦略でなければ自分事化しない。

自分達の言葉で戦略を創れば、

  1. 自分達らしい戦略が生まれ、
  2. 目標や戦略が共有され、
  3. 一人一人のメンバーの魂に火が着き、
  4. 組織に横連携が生まれ、
  5. 統合された戦略の下、それぞれの施策が展開され、

様々な関係者の心を動かすことで大きな成果が上がる。
このことを組織がゾーンに入ると呼ばれ、魔法のようなことが起きる。

4.「組織をゾーンに入れる。戦略マエストロの創発術」

1)盛り上がる会議(創発の場づくり)のコツ

  1. ダイバーシティな参加者と多様な視点でディスカッション
  2. 心理的安全性の担保(4つのルール)
    -傾聴と賞賛の文化
    -否定厳禁
    -ポジティブシンキング
    -感じたままを口にする
    ニックネームの効用や自己紹介、アイスブレイク、懇親会の開催→信頼関係を築く上に重要
  3. ワークショップとの違い notポストイット、notグループワーク、いつもの会議を創発の場に変える
  4. 創発を促す対話術とキラーワード
    -承認称賛し、場を温めていく言葉
    -掘り下げ、引き出し、明らかにする投げかけ
    -戦略キードライバーに迫る投げかけ
    -核心をつかみ出し、高揚感に導く言葉
  5. ボードライティングと戦略ビジュアライゼーション
    全ての発言を書き出すボードライティングを行うことによって心理的安全性が担保され、議論が俯瞰し、構造化して見えてくるので、改めて視覚化するのが戦略ビジュアライゼーションである。

2)創造的な戦略に導く視点 戦略家(ストラテジスト)の技

  1. ディスカッションフロー(戦略プランニングフロー)の設計が肝
  2. まずはWHYからはじめよ
  3. 顧客インサイトと経営インサイトを洞察して戦略をストーリー化
  4. 戦略を物語で語る「桃太郎メソッド」

3)なぜ組織がゾーンに入るのか?

  1. 知的好奇心で夢中になる
  2. 協同的目標の共創が一体感を高める
  3. ちょっとだけ無理目の目標設定がチャレンジ意欲を高める

相互触発による新たな知恵の創造とその共体験(創発)→組織がゾーンに入る

戦略創発ファシリテーターの仕事とは、多様なメンバーの知恵と想いを引き出し、創造的な戦略に導き組織変革に導くガイド役。
戦略マエストロとは、多彩多才な個性と専門性をもったメンバーの知恵と想いを引き出し、組織をオーケストレーションする役割。

最後に伊賀 聡氏より

伊賀 聡(いが あきら)氏

伊賀 聡 氏

株式会社アキラカ 代表取締役/戦略創発ファシリテーター/元 博報堂 チーフ戦略ディレクター

本日の講演は各企業でファシリテーターを育成してください、と言うメッセージも込めています。
行動に移し取組み、現場からできることがあるので、会議をいかに自由活発に、創造的な議論が出来る場にするか、メンバーと同じ目線でフォロワーシップを発揮しながら会議やプロジェクト、組織づくりを是非行ってください。
また、普段の日常対話(1on1)にも活かせるので、実践いただきたいとメッセージをいただきました。