開催レポート/会員幹部交流フォーラム2023年度 第3回〜社会・顧客ニーズに適応する/地域とともに成長する〜2023年10月13日

利益よりも永続 “お客様の感謝のしるし”が利益/ベンチャーマインドの涵養が経営の役割

企業訪問:株式会社井筒八ッ橋本舗
経営者講話:代表取締役会長兼社長 津田 佐兵衛 氏

企業訪問:オムロン株式会社
経営者講話:執行役員 石原 英貴 氏

第3回目のフォーラムは、京都市内で実施しました。今回のテーマは「創業の精神・理念の具現化」。京都に本社を構える伝統ある中小企業・大企業の2社を訪ね、創業時の理念をどう守り、どう事業に結び付けているか、経営層方々のお話を伺い、また、各社の歴史・経緯や製品・サービスに触れる機会となりました。

井筒八つ橋本舗株式会社訪問、津田会長兼社長との対話

京土産の代表、八つ橋を製造販売している老舗・井筒八つ橋本舗様を訪問しました。創業から200年以上経過していますが、紆余曲折しながらも、伝統の和菓子製造を展開しています。現会長兼社長は7代目の「佐兵衛」さんです。

津田会長兼社長の経験と経営持論

  • オーナー津田家に生まれ、“相続人”として大切に育てられた。「菓子屋と屏風は広げすぎたらコケる」、事業を広げ過ぎず、小さく長く生きるのが事業継続の要諦であると教えられて育ち、経営を担った。
  • 社長に就任したころは、“社員は敵”と考えるほど、従業員を大切にしなかった時期も。食品不正問題が社会的に話題になったころ、社員を信じることがいかに大事か、社員から学ばされた。
  • 先代の父に社長を解任されたが、あらためて先代の経営を学ぶことに集中し、再度社長に就任するなどの修羅場を経験。
  • 社是は「利益よりも永続」。利益を否定しているわけではなく“お客様の感謝のしるし”が利益。
  • 経営は「家族や社員の幸せのため」。会社の目的、一人一人の使命を守ってあげられる社長でありたい。
  • 出会いには全て“意味”がある。その出会いは、会うべくして出会っている。一つ一つの出会いを大切に

オムロン株式会社・石原執行役員の“企業理念経営とイノベーション創造”

創業90年。グループ売上8,700億円のオムロンは、制御機器事業、電子部品事業、ヘルスケア、社会システムの4つの事業の柱をグローバルに展開するミニコングロマリット企業です。1959年に社憲「われわれの働きで、われわれの生活を向上し、よりよい社会をつくりましょう」を制定し、また、1970年に未来予測理論「SINIC理論」を発表しながら、社会にとって必要な技術・製品・システムを創造し続けている理念実践型企業の代表です。
2018年にスタートした「イノベーション推進本部」を、2019年から率いる石原執行役員に、理念経営の実践についてお話を伺いました。

オムロンの事業展開のポイント

  • 創業者が引っ張っていたころにすべての経営の土台ができたが、さらに理念ベースの経営を加速するため、イノベーションを推進する専門部署を設置し、新規事業創造の組織インフラとして全社を動かす役割を担う。
  • 当社は60の事業(ベンチャー)の集合体。ベンチャーだから、事業を成功させるためには大量の「トライアンドエラー」が必要。大企業ではあるがベンチャーマインドの涵養が経営の役割でもある。
  • イノベーション推進本部の使命は ①ソーシャルニーズの創造 ②組織・仕組みの変革 ③人財の育成。特に人財育成には力を入れている。仕組みとプロセスを明確にし、人や事業を創造していく。
  • 企業理念を現場に浸透する策「TOGA」(The OMURON Global Awards)により、社員・現場が手掛けた好事例を全社に共有・浸透させ、理念実践行動を広めていく表彰活動。海外拠点も積極的に発信している。

第3回目のセッションを振り返って

京都企業2社の訪問を経て、企業の継続性や経営理念の具現化について、振り返り討議で下記のまとめを行いました。

①「創業の理念の取り扱い」

  • 企業の存在意義の明確化…なぜ私たちは存立して活動しているのか
  • 分かりやすい言葉…「利益より永続」「我々の働きで…」
  • 「見える化」…「掲示、カード化」と「伝える努力」(コミュニケーション)…発信、対話、一緒に作る、等

②「創業経営者のマインド」…社員を信じる、「世のため人のため」、「理念・目的・使命は変えない」「利益還元の序列」「人の出会いにはすべて意味がある」等

③具現化のための取り組み…事業創造推進の組織と具体的プロセス設計(イノベーション部門、TOGA、人財育成)

創業の精神を継ぎながら、企業を長期的に発展させていくことの難しさと、それを愚直に実践する2社の経営に触れた京都の1日となりました。