JMA会員交流フォーラム(第3回)
「『仕事を楽しむ』工夫と業績を結び付ける」
~浜松にてヤマハ発動機・鳥居食品を訪問~
今年度の会員交流フォーラムを締めくくる第3回のテーマは、「『仕事を楽しむ』工夫と業績を結び付ける」。今回は、研修室を飛び出し、静岡県浜松市とその近隣において、2月7日(火)・8日(水)の2日間、合宿形式で開催しました。
浜松は2023年NHK大河ドラマの舞台となっている徳川家康公ゆかりの地で「出世の街」として知られています。また、江戸時代の綿織物産業で培われた織機の技術と天竜川を通じて運ばれた木材の加工技術により育まれた「ものづくりの街」でもあります。
今回は浜松の歴史と技術を背景に持つ2社を訪問し、「組織づくり」に試行錯誤されてきた方々のお話を伺いました。
プログラム
日 程 | 内 容 |
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2/7(火) |
〜現地集合〜 午後 企業施設訪問・講演(1):ヤマハ発動機株式会社●施設見学
●講演 夕食(懇親会)〜宿泊〜 |
2/8(水) |
午前 講義前日の振り返り/当日訪問企業についての事前学習 施設訪問・講演(2):鳥居食品株式会社●工場見学
●講演 午後 講義・討議
「施設訪問・講演から学んだこと」「仕事を楽しむとは?」 〜夕方解散〜 |
2月7日(火)企業施設訪問・講演(1):ヤマハ発動機株式会社
「コミュニケーションプラザ」はヤマハ発動機の社員の皆さんが「ブランド」を感じ、訪れた一般の方々と「交流」するための場です。各自で自由見学した後、当日の講演者、クリエイティブ本部の山下和行さんと合流し、会社説明をいただきました。
◆会社説明 概要
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ヤマハ発動機の歴史
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経営理念と社風
「ブランド」を大切にする社風/挑戦できる風土(「やらまいか精神*」)/ものをつくる前にマーケットを創る(アフリカでのマリン事業の事例) -
コミュニケーションプラザの位置づけ
創業者のモーターサイクル事業への「思い」を次世代に伝える
3つのステークホルダー「社員」「お客様」「地域」
地域に根差し、「ヤマハ発動機 全社員の故郷」に
*静岡県西部の方言で「とにかくやってみよう」の意味
◆講演概要
「エンゲージメントを高めるための戦略的インターナルコミュニケーション」
ICコンサルタント・コーポレートブランディング アドバイザー
(ヤマハ発動機株式会社 クリエイティブ本部プランニングデザイン部マネージャー)
山下和行氏
詳細プロフィールはこちら
◆ご講演内容の骨子
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経営理念とブランド
- ヤマハ発動機の特徴(多種多様な事業/海外事業比率の高さ/ブランドを大切にする社風)
- 感動創造企業(感動サイクル=「感動の輪」を広げることでブランド価値と企業価値を高め、感動を生み出し続ける)
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従業員との共有
- 大切なのは「他社との違い」を説明でき、それを社員間で共有すること(「競争力の源泉」に)
- 社員にブランドを意識し「自分ごと化」してもらうための取り組み (「階層別ブランド研修」、「社内報」リニューアルの事例)
- その結果、生まれた社員の行動変容 → 互いを知り、認める(Respect)
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社内広報とインターナルコミュニケーション(IC)の違い
- 違うのは「視座」と「戦略性」
社内広報:経営トップからメッセージや社内の情報を一方的に伝えるだけの短期的な施策の積み重ね
IC:理念やブランドを軸に社員の行動変容を促す中長期的な戦略に基づいたPDCA。経営と社員、そして社員同士を相互に「きずな」で結ぶもの。 - まずは自己開示による人間関係の構築から(コミュニケーションの相互性)
- 内部コミュニケーションの質が高い会社=「良い(いい)会社」
- 違うのは「視座」と「戦略性」
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戦略的ICが企業に必要な理由
- 戦略とは「目的達成やゴール到達までの最適な道順やプロセス」
→理念・ブランドの浸透が、社員の行動変容を促し、経営課題解決につながる
- 戦略とは「目的達成やゴール到達までの最適な道順やプロセス」
懇親会
初日のプログラムの最後には懇親会を開催しました。
浜松餃子など、遠州浜松のご当地料理を楽しみながら、参加者どうしの交流を深めました!
2月8日(水)企業施設訪問・講演(2):鳥居食品株式会社
2日目は鳥居食品株式会社(以下、鳥居食品)を訪問しました。
鳥居食品は浜松でいわゆる「地ソース」を作ってこられた会社で社員は17名。間もなく創業100周年を迎えられます。現在は、地元の食材を使った家庭用ソースを中心に、ユニークな商品を生産し、地元だけでなく、全国にも展開されています。
工場案内ご担当の女性社員お二人にソースづくりについてレクチャーしていただいた後、工場見学をさせていただきました。全国でもトリイソースだけが行っているという木桶熟成の工程には、同社のソースづくりの伝統と独自性が感じられました。また、お二人の軽快なやりとりや手づくり感満点の工程説明には、自社への愛着と商品知識の深さのみならず、仕事を楽しむ姿勢が感じられました。
◆工場見学 概要
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ソースの歴史
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トリイ式のソースづくり(各工程の説明、材料へのこだわりと作り方の独自性)
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工場見学
続いて、同社の3代目社長 鳥居大資さんからご講演いただきました。都内の大学を卒業後、海外の大学でも学ばれ、国内外の大手企業でも活躍された鳥居さんが、2代目のご病気をきっかけに社長に就任されたのは2005年。それまで勤めておられた大企業とのギャップや仕事の進め方の違いに悩みながらも、十数年を掛けてコツコツ進めてこられた「組織づくり」について、お話しいただきました。
◆講演概要
「脳も体も汗をかく会社づくり」
鳥居食品株式会社 代表取締役 鳥居大資氏
詳細プロフィールはこちら
◆ご講演内容の骨子
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家業を継いだ経緯と承継時(理想と現実)
社員のバラバラで短い「ベクトル」/「やりたいこと」を伝える難しさ/やりたいことに「ブレーキを掛ける」 -
休めない組織から休める組織(助け合う組織)へ
職人制の廃止(仕事を切り分け、多能工を育てて年間休日85日⇒120日に) -
戦略的な「あきらめ」
組織の新陳代謝は「あきらめた」
17人の会社を維持する最善の方法が「あきらめ」 -
コミュニケーション活性化のためのルーティンとメディア活用
朝会での読書会、一斉清掃での「雑談」、ランチ交流会などの取り組み/メディア露出が社員の「誇り」に
企業施設訪問から学んだこと/全3回のフォーラムを終えて
共通点はブランド意識と戦略的な組織づくり
参加者同士がディスカッションし、今回訪問したヤマハ発動機、鳥居食品の2社の印象に残った取り組みや事象について振り返りその共通点を考えました。
印象に残った取り組みや事象(要約・抜粋)
ヤマハ発動機
- 階層別ブランド研修による「ブランド意識」の醸成
- ものを作るだけでなく、マーケットを作る
- 社内報への社員インタビュー掲載による相互認知
→相手を「尊敬する」のではなく「認める」。行動変容(やる気)までイメージして伝える - 会社は自己実現・成長の場
- 仕事に対するチャレンジ精神、楽しみ方を時代に合わせて伝える
- 全員の仕事が「ブランド力」向上につながる
- フラットな関係性 → 役職は「役割」
- 「壁打ち」の重要性(話を誰かに聞いてもらって考えを整理し言語化)
鳥居食品
- 社員同士の仲が良く、楽しそう
- 交流スペースで、社員が一緒に自社製ソースを使った「まかない」を食べる
- 価値観の近い世代・人材を集めることで時代を乗り切る
- 社員に多くを求めない。社員の成長が会社の成長 → 理想ばかりを押し付けるのではなく、(良い意味で)わりきる
- あきらめる=活きる、無理をしない
- 社長の地道なメディアへの発信(地方紙、TV)→メディア対応した従業員の「誇り」を醸成。周囲からも承認
- 子供へのアプローチ →地元の味に
- 朝会の読書で社長の伝えたいことを第三者の言葉として伝える
- 多能工化により、休みが取れる、助け合える組織に
そして、2社の共通点として
- 社員の交流の場がある(戦略的コミュニケーション)
- 社員が自社の製品・ブランドを愛している
- やる気・情熱・やりがい
- ステークホルダーは社員と顧客と地域社会
が挙げられました。ヤマハ発動機と鳥居食品は、会社の規模も扱っている商品も全く違いますが、共通点を持つ「幸福度の高い組織」なのではないでしょうか。
その後、ファシリテータの春野氏から全3回のフォーラムの講義内容の振り返りがなされ、「『楽しめるチームづくり』に向け、明日から実践できること」についての参加者の討議内容が全体に共有されました。
- 「管理型」から「支援型」への移行(組織の自発的行動を促す)
- 心理的安全性の担保された同僚との関係づくり
(まずは「自己理解/受容」そして「他者理解/受容」し互いを認め合う) - 幸福度の数値化を行う。
(アンケートツール等を利用し、前年対比や売上との関係を見る) - ブランドは沢山の人の思いの集まり。お客様の志向と自分たちの思いの共通点を見つけていく
- 世代に合わせたコミュニケーション(まず自分から話す)
- 自社の価値を理解する、理解してもらう機会を持ち、社員に好きになってもらう!
以上で2日間の全プログラムを終了し、今後の交流と再会を約束し、散会となりました。
参加者の声 ※開催後の参加者アンケートより(一部抜粋)
- 参加メンバーとの交流の機会や意見交換の時間を多くとることができた。
- 他の企業の方のお話を聞く機会は非常に少ないのでとてもいい刺激になりました。
- 2社の企業規模は違いますが、両者とも戦略的に経営されていると思いました。また、自社への愛着を醸成するような取り組みをされていることが、企業の発展・スピード感に繋がっているのだなと思いました。
- 合宿にすることで他の参加者と過ごす時間も増え、気軽に声を掛けられるようになって良かったです。
- これまで聞いてきたセミナー講師や経営者の方のお話とはちょっと違う考え方だったので、面白かった。
- 自社と立ち位置が似ている企業の見学ができ、大変参考になりました。取り組み自体も具体的に聞けて、とても良い機会でした。
- 実際に施設見学でき、企業の方のお話を伺えたことで、新たな気付きがありました。自社に置き換えた時に、何をすれば良いか考えてみたいです。 等々
講演者プロフィール
山下 和行 氏 Kazuyuki Yamashita
ヤマハ発動機株式会社
クリエイティブ本部 プランニングデザイン部 マネージャー
ICコンサルタント・コーポレートブランディング アドバイザー
1990年早稲田大学商学部卒、ヤマハ発動機入社。北京へ社費留学後、海外事業に20年間携わり、中国に10年、米国に2年、通算12年の海外駐在を経験。中国では現地製2輪車のセールス&マーケティングを担当し、4年で3,600店の専売販路網を構築し販売拡大。米国駐在中は販売会社VicePresidentとしてゴルフカー事業の再建を主導。本社帰任後、2014年からグループ全体のブランディングとインターナルコミュニケーションのリーダーとして、新組織立上げと業務改革を推進。2021年に経営企画部で役職定年。 現在はデザイン開発を主管するクリエイティブ本部でコーポレートデザイン戦略に携わる。また、エンゲージメントをテーマにIC研究に取り組み、若手人財育成を目的に講師やコンサルタント、アドバイザーとして活躍中。
鳥居 大資 氏 Daishi Torii
鳥居食品株式会社 代表取締役社長
1971年、浜松市に生まれ。慶応大学卒業後、内閣府主催の世界青年の船にアシスタント・ナショルナル・リーダーとして乗船し、シンガポール・スリランカ・インド・ケニア・ギリシアを訪問。帰国後、渡米しスタンフォード大学大学院で日米中の三国間関係を専門に修士課程修了。同大学院卒業後、三菱商事株式会社に入社。その後、GE(ジェネラルエレクトリック)社に転職。2005年、家業を継ぎ、鳥居食品代表取締役就任。
◆2022年度JMA会員交流フォーラム 開催概要◆
- テーマ
- 「幸福度の高い組織づくり ~仕事を楽しむ~」(全3回開催)
- 開催日時
- 2023年2月7日(火)~8日(水)[第3回]
- 開催場所
(講義会場) - えんてつ浜松駅前貸会議室
(静岡県浜松市) - 企業施設訪問先
- ヤマハ発動機株式会社(静岡県磐田市)/鳥居食品株式会社(静岡県浜松市)
- ファシリテータ
- 春野 真徳氏
株式会社スプリングフィールド 代表取締役
全能連認定エキスパート·マネジメント·インストラクター