シーメンスが変えるものづくり

 ~デジタルエンタープライズへの取り組み~

シーメンス株式会社
デジタルファクトリー事業本部
クラウドアプリケーションソリューション部 部長
角田 裕也 氏

初日である4月17日にはシーメンス株式会社のデジタルファクトリー事業本部 クラウドアプリケーションソリューション部部長である角田 裕也氏が登壇。同社は、インダストリー4.0の中核企業として参加する中で、日本の製造業がIoT化に取り組むべき方向性についてご講演いただきました。

シーメンスとインダストリ4.0

GDP1位のアメリカは、GDPの絶対額がもっともっと増え、2位をより大きく突き放しているというのが現状です。このようになった理由の一つに、 IT企業がビジネスを変革し、GDPを押し上げているというのがあります。一方で、国民一人一時間辺りどのくらい稼ぐ力があるかというGDPランキングで並び替えると、1位がドイツ、2位がアメリカとなります。このようにGDPでいうと4位であるドイツが一番になります。これは、ドイツ人というのはとにかく効率よく何でも自動化するからです。こうした取り組みの結果により、単位時間辺りのGDPが日本と比べても約1.5倍となっています。

アメリカがITの力を使ってどんどん大きくなって、ドイツや日本が得意とする製造業の領域に降りてきた時に負けてしまう、このままではいけないということで、ドイツ政府が主導して作ったのがインダストリ4.0です。このインダストリ4.0についてシーメンスが解釈しているのが「市場より早く」、「顧客の好みに合わせた製品を」、「コストミニマムで提供する」の3つです。一般論では、スピードを上げたり、カスタマイズをより細かくすると、費用的に値段が上がります。

私どもシーメンスでは、インダストリ4.0のためにどうしていこうかということを会社の戦略として検討しており、3つの領域として、電化・自動化・デジタル化を推進し、注力していこうとしています。特にデジタル化は、最も市場の伸びも大きく、これからのマーケットポテンシャルもあるため、注力していくことを戦略としております。これからデジタル化を進める上では、ハードウェアだけでなく、ソフトウェアの力が非常に重要なので、様々なソフトウェア企業を買収させていただいております。今まで約一兆円規模の買収を行い、2017年におけるソフトウェア、新しいデジタル化に関する売上が、およそ7,000億円にのぼり、その成長率も20%と、ずっと二桁成長を続けています。

デジタル化を推進するためのポートフォリオとして一番下にはハードウェアやデバイスが、そして電化出来ていなかったものは電化し、自動化するものは自動化するということです。そして、この上で様々なシミュレーションや、データを格納する仕組みなどを取り揃え、それを駆使したデジタルサービスを行います。さらに昨今では、IOTのオペレーティングシステムを提供していくのも私どもの戦略となっており、シーメンスという会社全体でも過去15年くらいで事業が50%以上入れ替わっております。

シーメンスがデジタル化を追求する意味

シーメンスがこういったデジタル化を追求することで何にチャレンジしているかと言うと、より効率を上げたり、スピードアップをしたり、お客様に対してよりフレキシブルな提案や、更なる品質向上をするといったことを、コストを抑えながら実現していくことです。

まず1つ目として、弊社の機器の動作検証するためのシミュレーションソフトがあり、その動作ロジックをラダープログラムツールと連携すれば、ラダープログラムを一から作る必要はありません。

2つ目は、実際のメカが無い、というケースの時には、シミュレーションソフトを使用することで、図面データから動きのチェックが全部可能になります。その結果、機械の開発工期を短縮化する、コストを抑える、あるいはお客様のカスタマイズに対応する、ということが出来るようになります。我々のTIAポータルは、これらのラダープログラムやネットワーク等、様々な現場で使われるようなソフトウェアを全て実現化したものになります。

IOTを使用した分析と予知保全

次に、IOTというものはそもそもどうあるべきか、という話しに移ります。私達は、必ず汎用技術を使うことを推奨しております。例えば専用のプロトコル以外では会話が出来ない、専用デバイスを買わないとデータが取れない、といった仕組みにしてしまうとコストもかかり、何でも繋がらなければならないIOTの観点から見ても、相手を選んでしまうということになります。もう一点は、セキュリティです。この2点を必ずやりましょうと申し上げています。

私達のIOTオペレーティングシステムは、マインドコネクト層・マインドスフィアー層・マインドアプリケーション層の3階層で構成しています。階層の一番下であるマインドコネクトは、様々な機械やプロトコルなどバラバラな仕組みをいかにして簡単に繋ぐか、という仕組みを持たせることです。次の階層では、クラウドなどにデータを蓄積します。更に、一番上のアプリケーション層では実際データが可視化出来る画面を作成します。我々の取り組みは、こう言ったデータを簡単に拾ってくるところやセキュリティのところなど、ゼロから作ると大変なものを提供することです。

セキュリティに関しては、IEC62443という産業用のセキュリティの認証を取っておりますので、非常に安全にデータを入手いただくことが出来ます。また、シーメンスがデータを閲覧するというようなことはありません。
予知保全の取り組みの実例として、メインのコンプレッサーが壊れ工場を2日間止めてしまったという非常に大きな問題があった企業がありました。今後このようなことが二度とないようにコンプレッサーに振動センサーを付けてみることになりました。瞬間的に数値が高く出ても、何かにぶつかったということも考えられ、あまり気にしていません。むしろ、ずっと振動が大きかったことほうが問題だということが分かるようにしています。

はじめに接続・閲覧できる仕組みを構築し、次に分析と予知保全ができるようになると、最後にデジタライズ&トランスフォームに移行します。トランスフォームというのは、機械メーカーやソリューションプロバイダーが、デジタルの力を使うことで、例えば従来売り切りのビジネスをしていたのを、サブスクリプションや従量課金のようにビジネスモデルを変更していくことです。

ものづくりはどんどん変わっていく

最後に5Gというトピックに少しだけふれたいと思います。5Gが進歩していくと、ロボットやPLCなどの制御機器をクラウドから制御させることができ、ハードウェアに依存することを考えなくてすみます。既にゲーム業界ではクラウドからPCを使ってスマートフォンですぐゲームができるように、ゲーム本体が存在しない状況になっていきます。こういった流れが製造業の方にもどんどん進んでくるのかなというように思います。これはまだもっと先の話になりますが、研究や技術が進歩していって、今までのものづくりのあり方がどんどん変わっていくと考えています。(終)