【コマニー】コマニーのSDGsの取り組み~コマニーSDGsメビウスモデル~

コマニー株式会社
常務執行役員 塚本 直之 氏

「サステナビリティ方針」誕生の背景

コマニー株式会社は1961年にキャビネットメーカーとして誕生しました。しかし、キャビネットの販売は輸送コストの高さから、なかなか成功に結び付きませんでした。そのキャビネット製造の技術を応用し、パーテーションを作って販売しようと事業転換を行いました。
そんな時、社内分裂がおこり、社員の大半が辞めてしまうといった事態が起こりました。その反省から「会社は、社員にとっても魅力的な場所でなければいけない」ということに気が付き、5つの理念をまとめました。それは「人道・友愛」「共存・共栄」「社会に貢献」「技術向上」そして「豊かで幸福な人生」です。
理念は脈々と受け継がれ、それを目指した事業を展開してきました。業績は年々右肩上がりを記録し、1980年に業界トップシェアを誇るリーディングカンパニーへと成長を遂げました。
しかし、その状況に一撃を与える出来事がありました。2008年のリーマンショックです。その時当社はパーテーション事業で初めて赤字を記録してしまいました。その悔しさから、改めて自分たちの事業、会社がどうあるべきなのかを考え直しました。
考え抜いた結果たどり着いたのは、5つの理念に立ち返り、それらを愚直に実践していくことでした。企業は世の中の幸福に貢献するために存在するべきであるという信念のもと、働く人や社会の人々のための事業をしていく意志を固めました。
そこで2016年に制定したのが「サステナビリティ方針」です。これは、人々の幸せを創造するために、それを支える事業開発や投資を継続的に行えるようにするという想いから誕生しました。制定するにあたり「誰をどのように幸せにするのか」を具体的に考えました。そして「誰」とは、お客様はもちろん、サプライヤー、地球環境、従業員、地域社会といったように会社に関わる全ての人だと定義しました。
この考え方が国連が2015年に採択したSDGsの基本概念と同じだと気が付いたのは、それから間もなくの事でした。そこでSDGsのゴールを指針にした、サステナビリティのための行動計画が立てられていきました。

コマニーSDGs∞(メビウス)モデル

SDGsには全部で17もの達成目標が設定されています。そのため、それらすべてに働きかけることは現実的に難しいです。そこで当社はパーテーション会社として何ができるのかを考えました。そして、SDGs17のゴールのうちの9番目である「産業と技術革新の基盤をつくろう」をレバレッジポイントに置いた「コマニーSDGs∞(メビウス)モデル」を作りあげました。レバレッジポイントとは日本語で「テコの力点」を意味します。そのレバレッジポイントの右側にプロダクト・サービス、左側にガバナンス(人々)に関するゴールを位置付けています。この2つを結ぶレバレッジポイントに働きかけることで、その他16のゴールに間接的に働きかけられるモデルを作りあげたのです。プロダクト・サービスの向上はガバナンス(人々)の幸せに、ガバナンス(人々)の幸せの創造は、プロダクト・サービスのさらなる向上に繋がります。「ガバナンス」と「プロダクト・サービス」の向上は互いに作用しており、相乗効果を生みだしています。

プロダクト・サービス「バックキャスティング」の考え方

商品開発に際しては、「バックキャスティング」という考え方で取り組んでいます。これは、ゴールやあるべき姿を先に設定し、そこから逆算することで、今するべきことを実行していく方法です。
これまでのモノづくりはお客様からの「こんなもの無いの?」「こんなことできないの?」という声だけを聞いて開発をしていました。一方現在は、そもそもお客様はその空間で何を実現しようとしているのか、現在その空間ではどのような課題をもっているかということを、社会問題も含めて考えるようになったのです。
お客様の真の要望を満たすには、「どんな商品が必要か」と問う前に、「その市場で何が起きているのか、未来はどのようになっているべきか」といったように、実際に起きている事象とその解決策に着目することが重要です。バックキャスティングの考え方を採用したことで各社員のアイデアが反映され、次々と商品開発が進むようになりました。

ガバナンス「HPCシステム」

また、従業員の心身の健康維持や、高いスキルを持って課題解決に取り組む人材育成が重要であるとの考えから、「HPCシステム(株式会社ガイアシステムが開発)」を導入しました。これはHuman-Power-Creation(人間力創発)の略称です。以前の無機質な企業風土を一新し、個人が意思を持った仕事をできるような企業風土に変えることを目指しました。
例えば、チームの仕事が達成したら互いに抱き合ったり、ハイタッチをして喜びあうといった、感情を動かすコミュニケーションを交わす取り組みです。こういった取り組みを通して、活発なコミュニケーションや対話が生まれるようになり、各自が意思を表明できる社内風土ができあがりました。そして、このようなボトムアップの風土によって、各自のアイデアが活発に交わされるようになったからこそ、バックキャスティングによる商品開発が成しえたのです。

地域社会とのつながり

当社は地域社会とのつながりを目的として、日本国内の被災地支援や、カンボジアでの雇用促進活動にも取り組んでいます。また、2019年6月に、小松市とSDGs推進に関するパートナー協定を締結しました。このようにSDGsの取り組みを通じて、地域との有効な関係の構築に繋がりました。生産と消費から人々が幸せになる世の中を目指す経営を続けることが、企業価値の最大化に繋がっているのだと思います。

まとめ コーディネータ:春野 真徳 氏

今回訪問した企業に共通していることは、各社の社長や中心となる人物が「将来こうなるんだ」という強いビジョンを持っている点だと思います。そしてそのビジョンを達成するために、そこに向かってメンバーを大切に育てています。
このことからも、組織の活性化のためには「明確なビジョン」と「人を大切にする想い」が必要不可欠だと考えられるのではないでしょうか。人を大切にすることでメンバーが元気になり、それが個人の生産性の向上に繋がります。それを達成しえた結果として会社の利益も上がります。この循環がKAIKAの理想的な姿だと言えるでしょう。