開催レポート/JMAマネジメント講演会生成AIの現在地 ― その可能性・未来予測
~新たな産業革命的変化に適応できる企業と個人~2025年6月10日(火)
2025年6月10日(火)に第2回JMAマネジメント講演会をオンライン開催いたしました。
今回の講演会は、「生成AIの現在地-その可能性・未来予測 ~新たな産業革命的変化に適応できる企業と個人~」をテーマに、文筆家・情報キュレーター 佐々木 俊尚氏をお招きしました。
当日は会員企業324名にお申込みをいただき、講話の後には質疑応答の時間を設け、参加者と活発な意見交換が行われました。
当日は4つの論点に的を絞り、生成AIの最新動向とその可能性を紐解き、テクノロジーと社会の交差点を俯瞰し、わかりやすく事例を交えて解説いただきました。
1.生成AIと従来のAIは何が異なっているのか?
AIは今に始まったことではなく、前から生成がつかないAIはたくさんありました。
基本的に現在のAIは第3次AIブームと呼ばれ、この新しい共有が15年間ずっと続いていると考えています。
第3次AIブームとは深層学習(ディープラーニング)をベースにしたAIが現在であり、深層学習が産業にもたらす最大のインパクトは「人間には到底見つけられない傾向や特徴、最適性を発見できる」が今のAIの最大の能力であるので、事例を挙げてご紹介します。
事例1.
世界最大の物流サービスUPS社は配送ソリューション「ORION」と呼ばれるAIシステムを使用して、北米の55,000もの配送ルートをカバーし、渋滞・天候・配送時間枠などをリアルタイムで分析。
最適な効率的配送ルートを作成し、ドライバーは最適化したコースを選べるようになり、その結果年間4億マイル(6.4億キロ)以上の走行距離、1億ドル(150億円)以上のコスト削減ができるようになった。
人間の計算では到底追いつけないが、AIだと瞬時に最適解に近い近似値を出すことが出来るので、AIを導入することで全体のコストが非常に下がり最適化もでき、ドライバー不足もある程度テクノロジーで解決できることになる。
事例2.
日本での同様な取り組みをご紹介。
神奈川県三浦市農業共同組合は農協のIT化を推進してサイボウズ㈱のAI配車システム「Kintone」を導入。従来の配車作業は全て手動で行われていたが、「Kintone」へ入力するだけで1秒以内に自動計算され、農家の出荷予定を受けて瞬時に配送ルートが決定するので、ドライバーが最短の距離で素早く野菜を集荷でき、作業時間が1日あたり約8時間削減できて生産性が大幅に向上した。
このような活用がAIの本命であり、もっとも重要な産業向け役割は最適化し、人間が行わなくてもAIが行ってくれる。
三浦市農協のようにAIを駆使することでなるべく事務的なリソースを減らし、コストをかけず様々な事をする可能性が出てきている。
現状、AIそのものの開発はアメリカ、中国が激烈な勢いで先行しているが、AIの世界は必ずしも新しいAIが出来てもその企業に独占されるとは限らない。AIの能力を1社が独占してしまうとその会社が世界中を独占支配してしまいかねない。その危機感がAIの世界には色濃く、なるべくAIはオープンに研究開発結果を共有していこうと、AI技術者や研究者個人で見ると、オープンに共有していこうという流れが大きい。
この流れがあるのでアメリカや中国で新しく開発されたAIアプローチは今後公開される可能性が高く、日本の産業界はそれを取り入れて活用することが可能になるので、日本にも十分にAIを活用できる分野が残っている。
2.このような深層学習の能力は生成AIになってどう変化するのか?
深層学習はデータを学ぶが、生成AIはインターネット上のあらゆる文章・画像・動画データを学ばせたらAIはどう変化するのか、これが生成AIのベースになっているLLM(大規模な言語モデル)という手法の出発点である。
LLMにもとづくAIは人間のように喋りはじめ、結果AIと人間の付き合い方が変わったと理解いただければ良いと思う。そして本質はAIを使うハードルが下がったこと。
例えばAI Agentはさらに進んでおり、ユーザーに代わって目標達成のために最適な手段を、自律的に選択してタスクを遂行するAIの技術であり、AIに触れて使いこなすハードルが1つ下がり、AIはより人間に近づいていって、より分かりやすく進歩したと認識いただきたい。
3.AIはさらに進化していくのか?
- シンギラリティ=AIが人間知能を超える転換点
- AGI=汎用人工知能、人間と同じように思考できるAI
今の状態で進化していけば遠くはないが、シンギュラリティが起きるかどうかは、まだ誰にもわからない。
しかしそれが起きる可能性をいまや誰も否定できない。
4.この先、ヒトの仕事はどうなるのか?
「人口減で人手が足らなくなる」と「AIやロボットが仕事を奪う」が同時に問題提起されているのは「世代交代」の問題が潜んでいると考えられる。
生成AIが進化すればするほど頭脳労働よりも、我々の身体的労働がより重要視され、仕事の内容が変わる可能性がある。
予測は出来ないが、大事なのは新しいテクノロジーと、それが引き起こす社会の変化を否定せず、後ろ向きなマインドにならないこと。人間とAIとの連携、テクノロジーは社会と産業を変えるが、この先の「仕事」を現時点から想像するのは難しい。
最後に佐々木 俊尚氏より

佐々木 俊尚 氏
文筆家・情報キュレーター
今起きている生成AIや自動運転、あるいはドローン、その先のロボティクスみたいなものが21世紀から22世紀にかけて我々社会の根幹をなす第3次、第4次くらいの産業になるのは間違いない。
テクノロジーは文明が崩壊しない限り後戻りしたことは一度もないので、この波に乗って前に向かって進んでいくしかないと肝に銘じていただきたい。
と勇往邁進なメッセージをいただきました。