常識を新しくつくりだす!
~ストレスフリーを目指して進化する仮設トイレ〜
「たかがトイレ、されどトイレ」という言葉をインタビュー中に何度か耳にしました。
確かに、トイレが使えないだけで大問題が起こりますし、深刻な健康被害まで引き起こしかねません。
建設現場やイベントで使われる仮設トイレがいかにストレスが少ないものにできるか。
そして、災害が起こったときにどれだけ迅速な整備に貢献対応ができるか。
仮設トイレの役割を追求し続けてきた谷本さんに、お話を伺いました!
日野興業株式会社
営業部長 営業企画部 部長 谷本 亘 氏
建設現場から災害時の避難所まで、様々な場所で活躍する仮設トイレ
実は……近所に事業所があったからです(笑)。
転職なのですが、募集していた営業職に興味もありました。
当時住んでいた岡山の営業所からスタートしました。
でも私がいろいろと、本社の方針や商品・カタログ制作物にアイデアを出していたんですよ。
そしたら「本社に来て自分でやってみろ」となって。営業企画部が設置されて今に至っています。
説明会で当社を知ってくれたときに、「社会貢献」と「安定」が響くようです。
商材はニッチなんですが、建設現場だったり災害時の避難所だったり、使われる先は実は社会にとても必要とされている場所なんですよね。
常にどこかで何かしらの形で現場に必要とされています。
災害の場合も、避難所だけではないんです。
復興フェーズになってから、道路や堤防修復の建設現場で使われることもあります。
レンタルで利用されるケースがほとんどで、リピートしていただく事が非常に多いのが特徴です。
トイレのストレスを、女性目線のものづくりで解決
「たかがトイレ、されどトイレ」とよく言っているんです。
「トイレに並ぶのが嫌」「汚いからできるだけ使いたくない」という場合がありますよね。
すると水分を取らなくなり、例えば建設現場だと熱中症等につながってしまう。
これは非常に深刻です。
こうした危険性は、熊本地震のときにあらわになりました。
車中泊をしていた方が、水分不足のまま同じ姿勢をとっていて、亡くなってしまったんです。
実は飲料水は十分にあったようなのですが、トイレに行きたくないからと思って摂取を控えてしまった。
時には健康被害や生死にも関わることがあるということです。
一方で、イベントでのトイレ問題は、イベント自体の満足度や屋台の売上も左右します。
大行列のトイレで順番を待つのが嫌だから飲み物を買わないでおこうとか、会場を早めに出て駅やコンビニのトイレを使おうとか。
実は建設業界で女性の担い手を増やそうという機運が高まったときに、現場の不満についての調査で圧倒的に多かったのがトイレでした。
でもこれは、女性の声というより高齢者や男性も含め、皆さんに通じますよね。
そう思って、我々は「女性向け」ではなく、「女性目線でのものづくり」という発想で取り組み始めました。ここ6、7年くらいですね。
もちろん現場で使っていただくためにはコストもなので、ただ設備を良くして高い商品を提供するのではなく、価格を抑えながらも満足度が高く快適に使えるトイレを拡充しています。
ある道路開通イベントに当社の「フラワートイレ」というピンクのトイレを置いたことがあるんです。
その時、家族連れがトイレの前で記念撮影していたのは、うれしかったですね。
仮設トイレはこれまで煙たがられていた存在だったので、「考えられない光景だな」と社員同士で話していました。
災害時問題を迅速に解決するための業界協働
そうかもしれません。
水や食べ物を備蓄している方は多いでしょうが、携帯トイレや簡易トイレを準備している方って、全体の20%ほどなんです。
でも実は、食べ物や飲み物はあるのに上下水道等が破損してトイレが壊れているという事態は、いくらでも起こり得ます。
避難所等に仮設トイレが設置されるまでには、数日かかってしまうことがほとんどのようです。
携帯トイレ・簡易トイレの備蓄について、もっと意識してもらえたらと、業界団体でも発信を強めています。
資材手配はもちろんですが、安全が確認できたらすぐ現地調査に入ります。
被災地のトイレが使えない原因が、上水道の破損か下水道の破損か、設置された仮設トイレの数は十分なのか。
そうした情報が必要ですし、今後の備えにも活用しています。
そうですね。
和式の仮設トイレしかなかったところに洋式を持って行くだけで喜んで頂けたこともありますし。
昔のタイプと比べて、快適さの違いに驚いてくださることもあります。
弊社が入会していた(一社)日本トイレ協会の下部組織にあたるのですが、災害を軸としてあらゆるトイレに関する問題を解消したいと思っていて、それには業界一丸となろうということで立ち上げました。
各地域で何か起こった時に、どの会社がどう対応できるかというのが見えにくかったのがこれまでの状況なので、迅速な対応ができるように団体として実態調査やマニュアル整備に乗り出しています。
はい。関連した他の業界団体との連携も強化しているんですよ。
たとえば全日本トラック協会さん。
こちらと協議しているのは、災害時の輸送についてなんです。
仮設トイレを被災地に運ぶのには輸送業界の協力が不可欠ですが、輸送業界も人手不足である中、輸送は大きな課題です。
さらに最近は梱包輸送が増えた分、仮設トイレ輸送に必要な平ボディタイプのトラックが減っている印象を受けます。
我々では解決できないことも多いので、まずは課題の協議や発信から始めています。
気候変動によって、災害は増えましたよね。地震、豪雨、風水害、そして感染症。
そうなってくると一企業では対応しきれないことも多いので、協働することの必要性を感じています。
意見があるならやってみろと後押しする風土
フットワークはみんな軽いと思いますよ。
リピート顧客が多いので、特にコミュニケーション能力は重視しているんです。
「仮設トイレが必要だ……あぁ、あの営業さんがいたな」と思い出してもらえるのが大事だなと思っています。
たとえばカタログはWebにも載せていますが、基本的には訪問して冊子をお届けしているんです。
見てください、今年の表紙。これ、わかります?
うんこ柄なんですよ(笑)。これ1つで、話のきっかけになるんです。
以前はなんの変哲もなかったデザインを、変えたんですよね。
こういうアナログな面感は結構大事にしています。
ちなみに、私が今締めているネクタイも同じ…(笑)。
これは試作品なので、まだ本格的に使うかどうか検討中なのですが……営業しやすい環境づくりも、日々考えています。
自由にものが言える風土なんでしょうね。
私自身が本社に来たのも、いろいろ文句を言っていたからなんですよ(笑)。
でも、それを却下するのではなく、やってみろと環境を与えてくれる寛大さはあると思います。
面白くて社会貢献にもなる取り組みなら、挑戦の後押しはしてもらえると思っています。
もちろん事業性も必要ですが、社会を支える各現場にどう役立てるか。
それを今後も追求していきたいと思っています。